アプリケーション実行時GUI変更を
可能とするUIMSの構築とその評価


東京電機大学大学院 工学研究科
電気工学専攻 博士後期課程
92GDE02 増田 英孝

概要: 全般

近年では、計算機の専門家ではないユーザが計算機を利用する機会が増えている。 このような背景から、計算機のユーザインタフェースとして、現在、GUI (Graphical User Interface) が広く利用されている。 GUIは、WIMP (Window, Icon, Menu , Pointing Device) を使用するユーザイ ンタフェースである。 コマンドを選択し実行するという操作方法ではなく、目的の対象を直 接指示して動かす 直接操作を提供するため、直観的でわかりやすいユーザインタフェース が実現できる。 GUIは、以下に示すように定型的なGUIと非定型的なGUIの2種類に大別するこ とができる。
定型的なGUIの作成支援ツールとして、プログラミングツールキットやクラス ライブラリ、およびこれらのツールキットやライブラリを対象と したGUI構築ツール (ユーザインタフェースビルダ)がある。 ツールキットやクラスライブラリでは、ウィジェット(Widget)やビュー (View)と呼ばれる標準的なGUI部品を提供している。 GUI部品には、ウィンドウ、スクロールバー、メニュー、テキスト、ボタ ン、リストなどがある。 事務処理ソフトウェアのように ある程度定型的なGUIであれば、これらのGUI部品をプログラミングによって組 み合わせて、アプリケーションのユーザインタフェースを作成することができる。 また、GUI構築ツールを使用することによって、画面上で視覚的 にGUI部品を組み合わせてGUIを作成することができる。 スタイルガイドに代表されるように、ユーザインタフェースの一 貫性は重要であり、このガイドラインに沿って作成すれば、 大多数のユーザに共通して利用できるGUIを作成できる。 しかし、個々人に対しては、非常に使い易いデザインを提供しているとは言えない。
制御システムやCADのように、非定型的なグラフィックスを多用する GUIのために、 グラフィックスを表示する部品(ドローイングエリアなど)が用意されている。 しかし、単にグラフィックスを表示する機能しか持っておらず、ポインティン グデバイスを使用し てグラフィックスの操作を行なう場合には、複雑な対話処 理の記述が必要になる。 また、このような分野のアプリケーションでは、新たな部品が必要になること が多く、その場合には必要な部品を作成しなければならないという問題がある。
本研究は、このような背景を元に、以下のように新方式を提案し、それを実装 して、評価実験を行なうものである。
  1. アプリケーション実行時GUI変更を可能とするGUI変更環境の構築
    本研究では、アプリケーションに手を加える ことなく、GUI の見かけの 定義、対話の定義をアプリケーション実行時にユーザ毎に対話 的・視覚的にカスタマイズすることが可能な GUI変更・修正環境 Metamer を提案している。 Metamer は個人の計算機環境をアプリケーションにとらわれずに動的に変形 (metamorphosis) させることを目的とする動的 GUI モディファイアである。 Metamer は、GUIの構成要素の変更、レイアウト 変更、対話の変更を可能とすることを目的とする。
  2. アプリケーション実行時GUI変更を可能とするGUI変更環境の評価 実験
    ユーザ自身がGUIカスタマイズを行なう場合、ユーザ本来のタスクの他に GUIの変更という余分な作業が必要となるが、ユーザの主観的な満足度を著しく向上 することができる。
    そこで、本研究では、ユーザが実アプリケーションを使いなが ら、アプリケーショ ンの状況に応じてGUIのレイアウトのカスタマイズを行なう有効性を検証する ために、Smalltalk の標準的なツールであるブラウザを利用して、アプリケー ション実行時GUI変更機能の評価実験を行なった。
  3. グラフ表現を持つアプリケーションのための拡張MVCモデルとその応用
    本研究では、グラフィックスを多用した非定型的なGUIの構築支援を 行なうために拡張MVCモデルを提案し、Smalltalk 上に実装を行なった。 拡張MVCモデルを利用することによって、グラフ表現を持つアプリケーション の個々の構成要素をGUI部品として実装できるため、 対話の処理の記述を容易にすることが可能になった。

本論文の構成

本論文の構成を以下に示す。
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