The Art and Science of Smalltalk の監訳者まえがき

これらの記述は、Communications of the ACM( 米国コンピュータ学会) 1995年 10月号のオブジェクト指向:その経験と未来,に載ったエキスパートのコメントの 中から拾い出したものです。もちろんSmalltalkにとって、よいことばかり書かれて いるわけではありません。
等々。
いずれにせよ、オブジェクト指向技術を語るとき、その話題の中心にはいつも Smalltalkがあり、最近では実用面での適用例や人気の急上昇の記述が随分と目立つ ようになりました。1996年3月に金沢で開催された、オブジェクト指向に関する 国際シンポジュームISOTAS'96での、B.Meyer氏の再利用性に関する講演、あるいはR 。Helm氏のデザインパターンに関する講演の中でも、SmalltalkがC++と対比されて同 等に出てくるのがたいへん印象的でした。
どうやら日本においても、今までのSmalltalkに関する誤解やら偏見を捨て,もう一 度その復権をさせるときが来たように思います。本書はまさにそのような目的にフィ ットしているといえます。日本においてはかってのAIブームのSmalltalk-80の印象が 強く、過去の言語と思われている方がいるかもしれません。したがってこのようなア メリカの評判を聞いて日本語で学習しようにも書店に並んでいるSmalltalkの書籍は ほとんどがSmalltalk-80時代に書かれたもので、現在市販されている処理系に対応し ていません。本書の翻訳はこのような状況を少しでも打破したいという願いをもって なされました。
ANSI Smalltalk(X3J20)のプロジェクトが進んでいるとき、またVisualWorks自体のバ ージョンアップもあるとは思いますが、本書に書かれていることはすべて基本的なこ となので時代の流れにも風化することはないでしょう。安心して本書でサク サクSmalltalkを 学習してもらいたいと思います。
本書の原著者であるS.Lewis氏はHewlett-Packard研究所ヨーロッパ研究センター ( 英国) に籍を置くソフトウェア技術者で、数多くの新しいプロジェクトをSmalltalk を使って手がけてきた実績が本書の内容に反映されております。たんなるSmalltalk の入門書を超えている理由です。また、使いやすいコンピュータ・インタフェースに も強い関心を持っており、この分野の研究・開発にサクサクSmalltalk を使ってみたいという 読者には特にこの本は役立つと思います。
終わりに、この本の翻訳出版にあたり、作業のコーディネートをしていただいた三 井物産の中枝総一郎さんに感謝いたします。また東京電機大学出版局の植村八潮さん と松崎真理さんには大変お世話になりましたことを申し添えます。
本書が日本におけるSmalltalkのさらなる普及にすこしでもお役に立てばと思います 。
1996年6月 東京電機大学工学部 笠原宏
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